「今月の写真展は、まず場所が目に入る。湿地、鉱山、都市、映画の街、地方の写真祭。写真が何を撮ったかより、どこに長くとどまったかが先に読める。」

10月は短く閉じる個展と、11月まで続く地方の展示が同時にかかる。第1週には仁寺洞のGaon Gallery(가온갤러리)とSpace Leeseen(스페이스 이신)をまず確認したい。中旬にはYoo Seung-ho〈BLUE HOUR〉、Goodspace Gallery(굿스페이스 갤러리)、Gallery AP_9、マーティン・パー回顧展が順に閉じる。月末にはYu Hwa Jungの初個展とpiknicのデボラ・ターベヴィル、キヤノンギャラリー、11月初めまでは写真晋州(サジンチンジュ)とJaime Permuthの展示が続く。会期の長いMin Byung-hunとLee In-mi、10月中旬に始まるロジャー・バレン個展は、この1か月で急いで回らなくてもいい。ただ、10月のルートを組むときの軸にはちょうどいい。

展示へのリンク・会期と会場

本文に記載された会期と会場をまとめた。記載のない開館時間・休館日・料金・予約方法と詳しい住所は確認が必要だ。

先に閉じる展示

Jeong Bong-chae〈向、水の上に描かれる〉の展示イメージ。
Jeong Bong-chae〈向、水の上に描かれる〉。Space Leeseen、10.1 – 10.13。画像出典:写真芸術。

Jeong Bong-chae、〈向、水の上に描かれる〉(向, 물위에 그려지다)
Space Leeseen。10.1 – 10.13。
牛浦沼は、Jeong Bong-chaeにとって風景より古い思索の場所だ。今回の展示は水面に生まれた痕跡に目を向ける。風が通り過ぎた跡、氷が解けながらつくった境界、水面に浮かぶ漂流物や網が、ある瞬間に線や記号になる。タイトルの「向」は方向を意味するが、写真の中の方向は行き先をはっきり示さない。どこへ行くべきかより、いまどこに立っているのかを問わせる展示だ。

Lee Ju-hyung〈Bloom and Boundary〉の作品イメージ。
Lee Ju-hyung〈Bloom and Boundary〉。Goodspace Gallery、9.15 – 10.14。画像出典:写真芸術。

Lee Ju-hyung、〈Bloom and Boundary〉
Goodspace Gallery。9.15 – 10.14。
ツツジを通して光と感覚の瞬間を扱う個展。花を被写体に置いているが、核心は花そのものより、咲く瞬間の境界にある。10月中旬に閉じるので、ソウルのルートでは早めに押さえておきたい。

〈写真で読む映画:コサドンからハリウッドまで〉の展示イメージ。
Lee Jae-yong・Lee Kwan-yong・Kim Mi-rim〈写真で読む映画:コサドンからハリウッドまで〉。Gallery AP_9、9.18 – 10.16。画像出典:写真芸術。

Lee Jae-yong・Lee Kwan-yong・Kim Mi-rim、〈写真で読む映画:コサドンからハリウッドまで〉(사진으로 읽는 영화: 고사동에서 헐리우드까지)
Gallery AP_9。9.18 – 10.16。
写真と映画が互いを読み合う場だ。タイトルのコサドン(高士洞)は全州の映画通りにつながる。写真が映画の場面をなぞるのではなく、映画が残した場所と記憶を写真のやり方で読み直す展示として見るといい。

Yoo Seung-ho、〈BLUE HOUR〉
LAYER 7。10.3 – 10.11。
俳優Yoo Seung-hoの初めてのフィルム写真展。展示紹介と予約情報はすでに別の記事にまとめた。5ft.magの記事を読む →

マーティン・パー、〈We Are Martin Parr〉
ソウル市立写真美術館。7.16 – 10.18。
10月中旬までに必ず押さえたい展示だ。ソウル市立美術館の案内によると、写真約500点と写真集90冊を含む大規模な回顧展で、ソウル市立写真美術館として初めて一人の写真家を取り上げる展示という意味もある。すでに別の記事で詳しく扱ったので、10月のリストでは会期終了間近の展示として改めて印を付けておく。5ft.magの記事を読む →

10月末まで

Yu Hwa Jung〈FACES OF ALL THINGS〉の展示ポスター。柵の向こうでポニーが花を見つめる写真の上に、展示名と会期、Comeamico Galleryの住所が書かれている。
Yu Hwa Jung〈FACES OF ALL THINGS〉。Comeamico Gallery、10.21 – 10.27。画像出典:展示ポスターおよびThreadsの公開投稿。

Yu Hwa Jung、〈FACES OF ALL THINGS〉
Comeamico Gallery(꼬메아미꼬 갤러리)。10.21 – 10.27。12:00 – 18:00。ソウル市麻浦区城美山路15ギル97。
Threadsで公開された案内によると、Yu Hwa Jungが8年間撮りためたフィルムを集めて開く初めての展示だ。会期中は作家が在廊する予定だというから、写真を見たあとに直接話ができる小さな展示になりそうだ。ポスターの韓国語タイトルは〈顔たち〉(얼굴들)、英語タイトルは〈FACES OF ALL THINGS〉と表記されている。作家のThreadsの案内を見る →

〈STILL CHUBBY - このまま長く〉の展示イメージ。
〈STILL CHUBBY - このまま長く〉。キヤノンギャラリー、9.13 – 10.31。画像出典:写真芸術。

〈STILL CHUBBY - このまま長く〉(이대로 오래)
キヤノンギャラリー。9.13 – 10.31。
タイトルどおり「このまま長く」を語る展示。キヤノンギャラリーで10月末まで続く。機材ブランドの空間で開かれる展示だが、成果物より、写真が日常の中に長くとどまるあり方に近いリストとして読める。

11月まで続く軸と地方の展示

2026大邱写真ビエンナーレ特別展、〈赤い旗、星となって〉(붉은 깃발 별이 되어)
大邱文化芸術会館。9.11 – 11.1。
先月の記事で扱った展示だ。「2026 / 9、今月の写真展」で読む →

写真晋州2026〈関係、世界とつながる〉の展示イメージ。
写真晋州2026〈関係、世界とつながる〉。PACギャラリーほか3会場、10.18 – 11.1。画像出典:写真芸術。

写真晋州2026(사진진주 2026)、〈関係、世界とつながる〉(관계, 세상과 연결되다)
PACギャラリーほか3会場。10.18 – 11.1。
2017年に始まった晋州の写真芸術祭。今年は「関係」をキーワードに掲げる。個人の内面から、世界とつながるあり方へと視線を広げる構成だ。地方の写真祭がひとつの都市の中で複数の空間を開くやり方は、いつ見てもいい。1日で見て回るより、街を歩きながら見るのが合っている。

Jaime Permuth、〈los libros y la noche〉
SVA Andrew Chang Gallery(SVA 앤드류장 갤러리)。9.19 – 11.1。アーティストトーク10.17。
ニューヨークと韓国のあいだでつくった二つの作品、〈Olmedini El Mago〉と〈BLINDNESS〉を並べる個展だ。作家の公式紹介は、移住、記憶、帰属意識、そして見知らぬ文化の中で経験する「見えなさ」を展示の中心に置く。規模より手ざわりのいい展示なので、10月末のソウルのルートに静かに差し込みたい。作家の公式案内を見る →

Park Byung-moon・Yasme Yando〈切羽の鉱夫たちの暮らし〉の展示イメージ。
Park Byung-moon・Yasme Yando〈切羽の鉱夫たちの暮らし〉。サムーニョ渓谷鉱山エコミュージアム、9.30 – 11.1。画像出典:写真芸術。

Park Byung-moon・Yasme Yando、〈切羽の鉱夫たちの暮らし〉(막장 광부들의 삶)
サムーニョ渓谷鉱山エコミュージアム(사무뇨 밸리 광산 생태박물관)。9.30 – 11.1。
Park Byung-moonは、長年にわたって韓国の炭鉱町と鉱夫たちの暮らしを記録してきたドキュメンタリー写真家だ。今回の展示は、韓国とスペインの鉱山、そしてそこで働いた人々の暮らしを並べて見せる。会場の名前からして場所の記憶を抱えている。写真が記録として残らなければならない理由がはっきりした展示だ。

〈写真の世界〉の展示イメージ。
〈写真の世界〉。現代子どもの本美術館、7.21 – 11.1。画像出典:写真芸術。

〈写真の世界〉(사진 세계)
現代子どもの本美術館(현대어린이책미술관)。7.21 – 11.1。
写真の中に幾重にも収められた、いくつもの世界を探る展示。子どもの本の美術館で開かれるだけに入口は軽やかだが、写真に初めて出会う観客に、写真がどう世界をつくり、どう読まれるのかを見せる場と見ることもできる。子ども連れのルートなら、10月末までに組み込んでおきたい。

ゆっくり見てもいい展示

デボラ・ターベヴィル〈雰囲気〉展のメインイメージ。ぼんやりとしたモノクロ写真の上に、Deborah Turbevilleとatmosphere、そして韓国語で「雰囲気」という文字が重ねられている。
デボラ・ターベヴィル〈雰囲気〉。piknic、10.23 – 2027.2.28。画像出典:piknic。

デボラ・ターベヴィル、〈雰囲気〉(분위기)
piknic(피크닉)。10.23 – 2027.2.28。ソウル市中区退渓路6ガギル30。
10月末に始まるが、このリストでいちばん大きな軸として別に印を付けておきたい展示だ。piknicの公式紹介によると、ターベヴィルは1970年代に〈ヴォーグ〉を中心に活動し、ヘルムート・ニュートン、ギイ・ブルダンとともにファッション写真の新しい流れをつくった人物として紹介されている。華やかな商品性より、被写体の内面とその周りに漂う空気、彼女がよく使っていた言葉そのままの「雰囲気」を写真の中心に置いた作家だ。

展示の規模も小さくない。SPACEの報道によると、ニューヨークのMUUS Collectionと協力して企画され、ヴィンテージプリントを含むオリジナル作品102点、ニューヨークで新たに制作したコンテンポラリープリント88点、コラージュの原本などを含め、約200点を見せる。初期の習作からフォトコラージュまでたどる構成なので、単なるファッション写真展というより、一人の作家の視覚言語を整理する回顧展として見るのが正しい。2027年2月まで続くが、10月に始まる写真展の中でもっとも重要なもののひとつだ。piknicの公式案内を見る →

ロジャー・バレン、個展
ミュージアム・ハンミ三清(뮤지엄한미 삼청)。10.15 – 2027.2。
ミュージアム・ハンミの本展の詳しい案内がまだ個別ページにまとまっていないので、タイトルや細かい構成はさらなる公開を待つ必要がある。ただ、作家の公式展示スケジュールには、10月15日から2027年2月までミュージアム・ハンミ三清で開かれる個展として載っている。ミュージアム・ハンミが9月に行った〈美術館B1:次の区域はロジャー・バレンです〉(미술관 B1: 다음 구역은 로저 발렌입니다)も、10月のロジャー・バレン個展のプレビューとして紹介された。バレンの写真はインスタレーションやドローイング、心理的な舞台と強く結びついてきた。詳しい情報が出たら、このリストから切り出して別の記事にしてもいい展示だ。作家の公式スケジュールを見る →

Min Byung-hun〈BETWEEN FORMS〉の展示イメージ。
Min Byung-hun〈BETWEEN FORMS〉。Particle、House of Photography、9.18 – 12.20。画像出典:写真芸術。

Min Byung-hun、〈BETWEEN FORMS〉
Particle(파티클)、House of Photography(하우스 오브 포토그래피)。9.18 – 12.20。
Min Byung-hunの写真は、いつも語りすぎない側にある。かすんだ光、低いコントラスト、いまにも消えそうに残る形。展示タイトルのとおり、形と形のあいだを見る場だ。12月まで続くので急ぐ必要はないが、静かなモノクロ写真を見たい日には、10月でいちばん確かな選択肢になる。

Lee In-mi〈流れる都市 FLUID SCAPE〉の展示イメージ。
Lee In-mi〈流れる都市 FLUID SCAPE〉。GoEun写真美術館、9.16 – 12.26。画像出典:写真芸術。

Lee In-mi、〈流れる都市 FLUID SCAPE〉(흐르는 도시 FLUID SCAPE)
GoEun写真美術館(고은사진미술관)。9.16 – 12.26。
GoEun写真美術館の釜山プロジェクト2026。都市は固定された背景ではなく、流れる風景だ。釜山で開かれる息の長い写真展なので、10月に釜山へ行く予定があるなら、キヤノンギャラリーやほかの地方の展示より優先度を上げてもいい。

ルートのメモ

ソウルは10月の第1週と第2週が勝負だ。Lee Kyung-taek〈Zero Point -零点-〉(Zero Point -영점-)はGaon Galleryで10月5日に先に閉じ、Jeong Bong-chaeは13日、Lee Ju-hyungとWhite Wave Gallery(흰물결갤러리)の2人展は14日、Gallery AP_9は16日に閉じる。マーティン・パー回顧展は18日までなので、ソウル市立写真美術館をまだ見ていないなら、この週に優先度を上げたい。

大邱写真ビエンナーレ特別展は先月の記事ですでにまとめた。10月のルートではリンクだけ確認すればいい。新しく加わる軸は10月18日以降の晋州だ。写真晋州を見に行くなら、1日だけの展示鑑賞より街歩きに近い組み方がいい。ソウルに残るなら、同じ時期のSVA Andrew Chang GalleryのJaime Permuth展を静かな代わりの候補に入れられる。

ソウルは10月下旬にもう一度予定を組んでもいい。Yu Hwa Jungの〈FACES OF ALL THINGS〉が21日から27日までComeamico Galleryで開かれ、デボラ・ターベヴィル〈雰囲気〉は23日からpiknicで始まる。ミュージアム・ハンミ三清のロジャー・バレン個展も10月中旬以降に確認したい大きな軸で、キヤノンギャラリー〈STILL CHUBBY〉は31日まで続く。

釜山はGoEun写真美術館のLee In-mi展が12月まで長く続く。10月に釜山へ行くなら、時間に余裕を持って見るのが合っている。

10月の展示をつくるのは、大きな一発より、長く見つめた場所たちだ。牛浦沼の水面、鉱山の切羽、都市の流れ、地方の写真史の積み重ね。写真は結局、どこに長くとどまったかを隠せない。