「自分の人生に満足し、それを自分自身の選択だと考えている人たちは、カメラの前で自由でした。」
創刊号インタビューの主人公は、写真家 Shim Kyu-dong だ。2017年、写真専門の出版社による「Noonbit写真家選」(눈빛사진가선)シリーズの写真集〈コシテル〉(고시텔。受験生や単身者が暮らすごく狭い部屋の下宿)でデビューした彼は、狭い空間で暮らす人々の姿を正面から見つめてきた。今号の5ft magazine は、江陵を拠点に活動する彼に会い、長い対話を交わした。
なぜ〈コシテル〉だったのか
一坪あまりの部屋。天井に吊るしたカメラが上から見下ろしているような視線。その中で、ある人はベッドに横たわり、ある人は本を読み、ある人はカメラを正面から見つめる。〈コシテル〉のシリーズを一度見た人は、その強烈な構図をなかなか忘れられない。
マガジンを開くと、彼の作品世界が一つずつ広がっていく。〈コシテル〉だけでなく、最近取り組んでいる〈単身世帯〉(1인가구)シリーズ、そして光についての彼なりの哲学まで。ここではその中から、いくつかの質問だけを先に公開する。
〈コシテル〉、〈ひとりで家に〉(나 홀로 집에)、そして人物写真まで、どれも人の「生」を扱っているように思います。Shimさんにとって「生」とは何ですか。
僕が考える生とは、時代や文化、家族など、自分が置かれた状況の体験だと思います。
短いが、ずしりと重い答えだ。彼がカメラで写し取るのは、単なる風景や人の外見ではない。時代が誰かに刻んだ痕跡そのものである。だから〈コシテル〉の写真は、単なる記録を超えていく。
「カメラの前で自由だった」ということ
インタビューで最も印象に残った答えの一つは、〈コシテル〉を撮影した1年の間、ある人は生きることに苦しみ、ある人は満足していたという話だ。そしてその違いが、そのままカメラの前に表れたという。
コシテルのプロジェクトを進める中で、生きることに苦しんでいる方もいれば、満足している方もいたと聞きました。その違いはどこから来るのでしょうか。
その違いは、個人をかたちづくる価値観の違いだと思います。「自分はこういう人間だ!」と決めてしまって、それを満たせなかったときに来る自己嫌悪、とでも言うんでしょうか。無意識が関わる部分なので、心に決めたからといって簡単には変わらないところだと思います。自分の人生に満足し、それを自分自身の選択だと考えている人たちは、カメラの前で自由でした。
写真家はこの答えに続けて、短い時間で人物をどう写し取るのか、自分なりのコツを語っている。1年という長い時間が生む親密さと、短い時間で本心を引き出す方法は、どう違うのか。その話は、ぜひマガジンで直接読んでほしい。
短い時間で人物をうまく写し取る方法や、哲学はありますか。
ええ、そうなんです。長い時間がくれる親密さは違いますよね。でも親しすぎるのもまた、その人のある特別な部分だけを写すことになる気がします。良し悪しがあるんです。短い時間で人物を撮るときの僕のコツは、自分の持っている写真の哲学について話をして、お互いに理解し合う過程を持つことです...
〈単身世帯〉、新しいシリーズ
Shim Kyu-dong は〈コシテル〉のあとも仕事を止めなかった。最近は〈単身世帯〉という新しいシリーズに取り組んでいる。今号のマガジンでは、彼自身が公開した新作もあわせて見ることができる。
〈単身世帯〉は〈コシテル〉の延長線のようでいて、違う。写真家はこう話す。「これからは、推しのグッズでいっぱいの中年女性、裕福な単身世帯、インフルエンサー、コスプレが趣味の人など、この時代の肖像をアーカイブしていこうと思っています。」
光、そしてフィルム
今号の5ft magazine のテーマは「光と影が残した余韻」。インタビューの後半では、写真家の光についての哲学と、フィルムを選ぶ理由について深い話が続く。「実のところ、フィルムで撮るというのは光を撮ることだと言っても過言ではありません」と彼は語った。
フィルムで作品をつくるのは簡単ではないと思いますが、フィルムにこだわる理由はありますか。
特にフィルムだけにこだわってきたわけではないんです。良し悪しがあって、作品によって選んでいる感じです。コシテルを撮ったときは中判でなければならなくて、デジタルの中判を買うお金がありませんでした。でもフィルムの中判カメラなら買えたんです...
作品の中で光と影を生かす、ご自身なりの方法や哲学はありますか。
僕は人工的な光が好きではありません。人工的な光というのは、太陽光を除いた照明だけを指すのではないんです。この時代、室内の電灯は自然なものとして受け入れられていますよね。日差しの強い都心の通りで建物に反射した光も、照明のように見えますが、自然だと感じます...
ほかにマガジンで読める話
このインタビューには、ここに移しきれなかった面白い話がまだある。
- ● ウェディング写真とドキュメンタリー写真。正反対の二つの世界を行き来する写真家のまなざし
- ● 2019年に自ら撮った自主映画に込めたメッセージ
- ● 仕事を続けさせてくれるインスピレーションの源
- ● 彼が写真を始めることになった決定的な瞬間
- ● 好きなフィルムとカメラ、そしてその理由
インタビューの全文はマガジンで
Shim Kyu-dong のインタビュー全文と未公開の作品写真は、5ft magazine Vol.01 創刊号で読むことができます。