みなさん、子どものころ修学旅行に友だちと出かけるとき、ひとつは手に持っていった使い捨てフィルムカメラを覚えていますか? もちろんお若い方はピンとこないかもしれませんが、私のようなおじさん世代(?)ならきっと「あったあった」と思うはずです。
昔は今のように、どの家にもカメラが何台もある時代ではありませんでした。フィルムカメラ1台がなかなかの貴重品で、ふだんはタンスの奥に宝物のようにしまっておき、卒業式や家族旅行のような特別な日にだけ取り出して使ったものです。
ドラマ《恋のスケッチ~応答せよ1988~》には、ドクソンが修学旅行でお父さんのカメラをなくしてわんわん泣く場面も出てきます。それくらい当時のカメラは、気軽に持ち歩くにはかなり貴重なものでした。だからでしょうか、修学旅行や遠足に出かける子どもたちの手には、わりと気兼ねなく使える使い捨てカメラが1台ずつ握られていたように思います。
使い捨てカメラならではの味わい
使い捨てカメラは、カメラとして見るととてもシンプルです。ピントはほぼ固定で、シャッタースピードや絞りを自分で調整することもできません。レンズも今どきのカメラと比べると、シャープとは言いにくいですよね。ところが面白いことに、まさにその物足りなさが、使い捨てカメラならではの写真を生むんです。
少しぼやけていたり、露出がぴったりでなかったり、フラッシュを焚くと人物だけ白く飛んでしまったりもします。でもそういう写真を眺めていると、なぜかその日の雰囲気がいっそう生々しく感じられることがあります。この不完全さが、今のデジタルカメラではなかなか味わえない懐かしさを呼び起こしてくれるのだと思います。それに独特の巻き上げも外せません。1枚撮って次のコマのためにフィルムを巻くときの「ジジッ、ジジッ」という音と、指先に伝わる歯車の感触。こんな小さなことも、昔の懐かしさを呼び覚ましてくれる気がします。
使い捨てカメラはどう使う?
使い捨てカメラの使い方はとても簡単です。まず巻き上げダイヤルを止まるまで回します。あとはファインダーをのぞいて構図を決め、シャッターを押せばおしまい。1枚撮ったらまたダイヤルを回して、次の写真を撮ればOKです。製品によって少しずつ違いますが、だいたい27枚前後撮れます。
ただし、ひとつ気をつけたいことがあります。使い捨てフィルムカメラはたいていかなりの広角レンズなので、写真に指が写り込む失敗をしがちです。特にカメラを構えるとき、知らないうちにレンズの横に指がかかっていることがあるので、レンズをふさがないよう気を配りながら撮るのがおすすめです。
また、室内や暗い場所ではフラッシュを積極的に使いましょう。使い捨てカメラのレンズは明るくないうえ、使えるシャッタースピードも限られているので、光が足りないと思った以上に暗く写ってしまいます。製品によってはフラッシュの充電ボタンを押したり、スイッチを入れてしばらく待ったりする必要があるので、撮る前に確かめておくといいですよ。
今でも使い捨てカメラは売っている?
スマートフォンで何千枚も撮れる時代ですが、面白いことに使い捨てカメラは今も売られています。代表的なのはKodak FunSaverで、Fujifilm QuickSnapのような製品も長く愛されてきました。モノクロが撮れるIlfordの使い捨てカメラもありますし、最近はいろいろなブランドがさまざまなフィルムやデザインの製品を出しています。個人的には、使い捨てカメラを選ぶときにスペックをあれこれ悩む必要はないと思っています。そもそも完璧な写真を撮るためのカメラではありませんから。私は手軽に手に入るKodak FunSaverが好きです。
2026年にわざわざ使い捨てカメラ?
正直、効率だけを考えれば使い捨てカメラを使う理由はほとんどありません。スマートフォンのほうがずっとシャープで、失敗も少なく、撮ってすぐ確認できます。おまけに使い捨てカメラは本体代だけでなく、現像とスキャンの費用までかかります。









それでも使い捨てカメラを求める人がいるのは、たぶん写真を撮る体験そのものが違うからだと思います。27枚しかないので何でもかんでも撮ることはなくなるし、撮った写真をすぐ見られないので、その瞬間にもう少し集中するようになります。そして数日後に仕上がりを受け取ると、完璧ではない写真のなかに、なぜか気に入る1枚が見つかったりするんです。
子どものころ修学旅行で友だちと撮った写真も、ほとんどは完璧ではありませんでした。誰かは目をつぶっていて、誰かはよそを向いていて、フラッシュで顔が真っ白に飛んだ写真もありました。でも20年、30年たって見返すと、むしろそういう写真がいちばん面白いんですよね。
だから使い捨てカメラは、うまく撮るためのカメラではなく、記憶を残すためのカメラなのかもしれません。旅行や友だちとの集まりを予定しているなら、スマートフォンと一緒に使い捨てカメラを1台持っていってみてはどうでしょう? 何年か後、その27枚が思っていたよりずっと楽しい思い出になっているかもしれません。